はじめに
「役人って、何してるの?」「定時に帰れて楽な仕事じゃないの?」
そんなイメージを持ったことはありませんか?
役人、つまり公務員の仕事は「お役所仕事」と揶揄されることもありますが、実際には地道で責任ある業務が日々行われています。本記事では、ある市役所の行政職員(30代・男性)の一日を追いながら、普段なかなか見えない「役人のリアルな日常」を紹介します。
役人の一日:ある市役所職員の場合
8:15 出勤
朝は、始業時間の15分前には出勤するのが暗黙のルール。机の上を整理し、パソコンを立ち上げ、スケジュールを確認。すでに同僚数人は到着しており、あいさつを交わす。
8:30 朝礼・ミーティング
部署内での朝礼が始まる。課長からの連絡事項、当日の来客予定、担当業務の進捗確認などが簡潔に共有される。短いながらも、情報共有の場として重要な時間だ。
この日、彼は「地域振興課」に所属。主な業務は、地域の活性化施策や住民団体との連携、補助金申請の対応などだ。
午前の業務
9:00 メールチェックと書類確認
まずはメールチェック。住民からの問い合わせ、町内会長からのイベント相談、上司からの確認依頼など、20件以上が届いている。
同時に、前日提出された補助金交付申請書類を確認。不備があれば、住民に連絡して再提出を依頼する。公的資金を扱うため、慎重なチェックが求められる。
10:30 窓口対応
住民から直接、市役所の窓口に相談に来るケースもある。この日は、自治会長が「夏祭りの助成金」について質問に訪れた。
「書類はどこでもらえるのか?」「いつまでに出せばいいのか?」といった質問に丁寧に対応。言葉を選びながら、制度の説明と必要書類の案内を行う。
昼休み:12:00~13:00
昼食は庁舎内の食堂で同僚と一緒に。職場の雰囲気や人間関係を築く上でも、昼休みは貴重な時間。食後は少し資料に目を通しながら、午後の予定を確認。
午後の業務
13:00 庁外での会議に出席
午後は市内の公民館で開かれる「地域活性化協議会」の会議に出席。市職員として、地域住民や地元NPO、商工会などと意見交換を行う。
ここでは「空き家活用プロジェクト」や「地域おこしイベント」について話し合われた。役人の仕事は、ただ机に座って書類を作るだけでなく、こうした“人と人との対話”も重要なのだ。
15:00 会議報告と対応整理
庁舎に戻り、会議内容を要点ごとに整理して課内に報告。次回の会議までに必要な準備事項を洗い出し、各担当と分担していく。
ここで、住民からの問い合わせに対応する電話が数件。対応しながら、PC画面では翌週の市議会で説明する資料を作成中。マルチタスクが求められる。
17:15 定時…だが仕事は終わらない
定時のチャイムが鳴るが、この日は「イベント開催要領」の確認を上司に頼まれており、18時頃まで残業。月に10〜20時間程度の残業はあるが、職場によっては繁忙期にはもっと増えることも。
公務員の一日で見えてきたこと
こうして見ると、役人の日常は、想像以上に「人と接する」「地味で細かな確認作業が多い」仕事だとわかります。
誰のために働いているかが明確
「市民のため」「地域のため」と目的がはっきりしているのが、民間企業との大きな違いです。だからこそ、責任は重く、簡単に“効率化”できない場面も多いのです。
曖昧さを残さず、公平・平等に
補助金や制度など、誰にでも平等に扱う必要があるため、「この人だけ特別に」などという対応はできません。これが“融通がきかない”と言われる理由でもありますが、逆に言えば「公正」を守る姿勢の現れでもあります。
よくある誤解と実際のギャップ
「楽な仕事」という誤解
一部の部署では定時で帰れる場合もありますが、実際には住民対応、イベントの夜間対応、緊急災害時の24時間体制など、負担が大きい場面もあります。
「ずっと机に座ってるだけ」ではない
会議、現場確認、庁外打ち合わせなど、外に出る業務も意外と多いです。特に地域振興や福祉、教育関係の部署では、庁外業務が日常的に発生します。
役人のやりがいとは?
- 地域に貢献している実感がある
- 制度を通じて多くの人を支えられる
- 困っている人から「ありがとう」と言われる瞬間がある
数字では測れないやりがいが、この仕事にはあります。時に面倒なクレームや批判もありますが、それも「住民の声」として誠実に受け止める姿勢が求められます。
まとめ
役人の一日は、見えにくいけれど社会にとって欠かせない仕事の連続です。地味で地道な業務が中心ではありますが、その一つひとつが市民の暮らしを支えています。
誰かがやらなければならないこと。だからこそ、誠実に、正確に、責任を持って。
今日も全国のどこかで、無名の「役人」が静かに仕事に向き合っています。
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