登記簿謄本でわかること・わからないこと完全ガイド

~不動産調査の第一歩、でも「万能」ではない~

「この土地って誰のもの?」「担保に入ってるの?」「昔からの持ち主?」

こうした疑問に答える第一の資料が**登記簿謄本(登記事項証明書)**です。
不動産取引・相続・担保設定・裁判など、幅広い場面で「登記の中身」は必要になります。

ただし、登記簿を見ればすべてが分かるわけではありません。
不動産初心者の方にとっては、見慣れない用語や構成に戸惑うことも多いでしょう。

この記事では、

  • 登記簿謄本の基本構成
  • 実際にわかること・わからないこと
  • 取得方法と読み方のコツ
  • 注意すべき落とし穴

などを、実例を交えて解説していきます。


  1. 第1章:登記簿謄本とは?基本構造を知る
    1. 登記簿とは?
    2. 登記簿の構成:3つの部
  2. 第2章:登記簿でわかること7選(実務で必須のポイント)
    1. ① 現在の所有者と持分割合
      1. ✅ こんなときに重要:
    2. ② 所有権の移転履歴
      1. ✅ こんなときに重要:
    3. ③ 抵当権や根抵当権の有無
      1. ✅ こんなときに重要:
    4. ④ 地目・地積などの土地情報
      1. ✅ 注意点:
    5. ⑤ 建物の構造・用途・床面積
      1. ✅ こんなときに重要:
    6. ⑥ 所在・地番(住居表示とは異なる)
      1. ✅ 調査時の注意点:
    7. ⑦ 地役権・賃借権など他人の権利の有無
      1. ✅ 要注意:
  3. 第3章:登記簿では「わからないこと」もある!6つの盲点
    1. ① 現在の地価・市場価格はわからない
    2. ② 現況の面積・形状とは一致しないことも
    3. ③ 境界線・越境状態は登記されない
    4. ④ 建物のリフォーム・増築歴はわからない
    5. ⑤ 所有者の連絡先や死亡情報はわからない
    6. ⑥ 現在の使用状況・入居状況は登記されない
  4. 第4章:登記簿謄本の取得方法と注意点
    1. ① 法務局で取得する(窓口・郵送・オンライン)
      1. ✔ 料金目安
    2. ② 必要な情報:地番(住所とは異なる)
    3. ③ 失敗例:間違った地番で取得してしまった
  5. 第5章:実践例で理解!登記簿からこんなことがわかる
    1. 実例①:所有者が複数人=相続未登記の可能性
    2. 実例②:表面上は更地→でも抵当権が残っていた!
    3. 実例③:地目が「畑」=農地法の許可が必要
  6. 最後に:登記簿は出発点。現地と併せてこそ意味がある
  7. ✅ チェックリスト:登記簿で確認すべきポイント
  8. まとめ:登記簿謄本は「読む力」が鍵を握る

第1章:登記簿謄本とは?基本構造を知る

登記簿とは?

登記簿とは、不動産(土地・建物)の「公的な身分証明書」のようなものです。

国が管理する「不動産登記制度」に基づき、

  • 誰が所有者か
  • どんな権利がついているか(抵当権・地上権など)
  • 面積・構造・住所などの物理的な情報
    が記録されています。

この登記簿の写しを取得したものが「登記事項証明書(=登記簿謄本)」です。


登記簿の構成:3つの部

登記簿は、大きく3つの区画に分かれています。

区分内容説明
表題部不動産の物理的情報所在、地目、面積、構造、床面積など
権利部(甲区)所有権に関する記録所有者、取得原因、持分割合など
権利部(乙区)所有権以外の権利抵当権、賃借権、地役権などの記録

第2章:登記簿でわかること7選(実務で必須のポイント)

① 現在の所有者と持分割合

  • 「甲区」の最新記載に注目
  • 複数人で共有している場合、持分も明記されている
     → 例)2分の1ずつ、3分の1など

✅ こんなときに重要:

  • 売買相手が真の所有者か確認
  • 相続登記が未了なら所有者不明土地の可能性

② 所有権の移転履歴

  • 「○年○月○日 所有権移転」など、過去の登記も残る
  • 原因も記載:売買・相続・贈与・競売など

✅ こんなときに重要:

  • 相続回数が多い物件(管理が不十分な可能性あり)
  • 競売履歴のある物件(金融的なリスクの有無)

③ 抵当権や根抵当権の有無

  • 「乙区」に抵当権が設定されていれば、債務の担保にされている
  • 債権額、債務者、債権者(銀行など)も記載

✅ こんなときに重要:

  • 購入予定物件に残債があるか?
  • ローン完済後も抹消登記がされていないケースも多い

④ 地目・地積などの土地情報

  • 「表題部」にて、宅地・田・畑・雑種地などがわかる
  • 面積は「登記地積」。必ずしも現地と一致するわけではない

✅ 注意点:

→ 地目「畑」は農地法の制限対象。売買に農業委員会の許可が必要


⑤ 建物の構造・用途・床面積

  • 木造・鉄筋コンクリート造などの構造、階数
  • 用途:居宅、事務所、店舗など

✅ こんなときに重要:

  • 賃貸併用住宅や店舗付き住宅を見分ける
  • 建築確認済証との整合性確認にも使う

⑥ 所在・地番(住居表示とは異なる)

  • 表題部の「所在」「地番」は登記上の住所
  • 実際の住所(○○市△丁目×番地)とは異なることが多い

✅ 調査時の注意点:

→ 住居表示変更された地域では、地番から住居表示を役所で照会する必要あり


⑦ 地役権・賃借権など他人の権利の有無

  • 「乙区」に記載。たとえば、
     - 地役権:他人の土地を通行できる権利
     - 賃借権:第三者が借りている情報(ただし登記されていないことも)

✅ 要注意:

→ 賃借権が登記されていないと、入居者の有無がわからない=現況確認が必須


第3章:登記簿では「わからないこと」もある!6つの盲点

登記簿は公的資料ですが、「完全な情報源」ではありません。
見落としがちな“登記簿の限界”を把握しておきましょう。


① 現在の地価・市場価格はわからない

  • 登記簿に価格は記載されていない
  • 「売買による所有権移転」はあるが金額は不明

→ 相場や実勢価格はレインズ・土地総合情報システム等で確認を


② 現況の面積・形状とは一致しないことも

  • 登記面積(地積)は古い測量基準のことも多く、誤差あり
  • 境界確定や実測は別途必要

→ 売買契約時には「実測精算」があるか確認を


③ 境界線・越境状態は登記されない

  • ブロック塀や樹木の越境、境界未確定状態は登記には反映されない

→ 境界確認書や現地調査が必要不可欠


④ 建物のリフォーム・増築歴はわからない

  • 表題部の構造は“新築当初”の内容が記載されていることが多い

→ 現況と一致しないケースあり。建築確認通知書などで再確認


⑤ 所有者の連絡先や死亡情報はわからない

  • 名前・住所は記載されるが、電話番号などはなし
  • 所有者が亡くなっていても、相続登記未了だと登記は更新されない

→ 所有者不明土地問題の一因にも


⑥ 現在の使用状況・入居状況は登記されない

  • 空家か賃貸中か、誰が住んでいるかは不明
  • 賃借権の登記がなければ調査ではわからない

→ 現地確認・不動産業者へのヒアリングが必要


第4章:登記簿謄本の取得方法と注意点

① 法務局で取得する(窓口・郵送・オンライン)

  • 【窓口】最寄りの登記所(法務局)で申請
  • 【郵送】必要書類を送付
  • 【オンライン】登記情報提供サービス(法務省)

✔ 料金目安

  • 登記事項証明書:1通600円(窓口)
  • オンライン提供情報:PDF出力 1通335円

② 必要な情報:地番(住所とは異なる)

  • 地番が必要(住居表示ではNGなケースあり)
  • 固定資産税通知書などで確認できる場合も

③ 失敗例:間違った地番で取得してしまった

→ 地番と住居表示のズレで“隣の土地の登記簿”を取ってしまう人も

→ 地番の確認は、役所の資産税課や地図資料で行うと確実


第5章:実践例で理解!登記簿からこんなことがわかる

実例①:所有者が複数人=相続未登記の可能性

→ 「昭和56年 所有権移転・相続」で止まっている場合
→ 相続登記未了で、売却や担保設定に支障が出る


実例②:表面上は更地→でも抵当権が残っていた!

→ 「乙区」に旧所有者名義で抵当権登記が残存
→ 抹消登記されていないと、金融機関や買主に不信感を持たれる


実例③:地目が「畑」=農地法の許可が必要

→ 売買や宅地転用に行政の許可が必要
→ 「地目変更登記」がされていない土地は要注意


最後に:登記簿は出発点。現地と併せてこそ意味がある

登記簿謄本は、不動産を「公的に確認する」ための出発点です。
しかし、それだけで「物件のすべて」が分かるわけではありません。

大切なのは、

✅ 登記簿で得られる情報を正しく読み取る
✅ 限界を知った上で、現地・役所・周辺住民からの情報も合わせる
✅ 書類に現れない「現況」を軽視しない

という三点です。


✅ チェックリスト:登記簿で確認すべきポイント

チェック項目チェック済み
所有者の氏名・持分割合
所有権移転の原因と履歴
抵当権や根抵当権の有無
地目と面積の確認
建物の構造・床面積の整合性
地役権・賃借権の記載有無
表示住所と地番の違いに注意

まとめ:登記簿謄本は「読む力」が鍵を握る

登記簿はただの「紙の情報」に見えますが、
それをどう読み解くかによって、不動産に対する見方が大きく変わります。

トラブルを避けるも、価値を見極めるも、「登記簿の読み方」次第。

専門家に頼らずとも、自分で読めるようになることが、不動産リテラシーの第一歩です。

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