不動産を購入する際に、「建物状況調査(インスペクション)」という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。特に中古物件を購入する場合、この調査は“後悔しない買い物”をするための大きな鍵となります。
この記事では、インスペクションの基礎知識から、費用の相場、どんなメリットがあるのか、いつ・どう活用すべきかを詳しく解説します。不動産初心者でもわかりやすくまとめているので、ぜひ参考にしてください。
第1章 インスペクションとは何か?
1-1 インスペクションの定義
インスペクション(建物状況調査)とは、専門の建築士などが第三者の立場で建物の状態を調査・診断することをいいます。主に「構造上の問題」や「劣化の有無」を確認し、購入者が安心して物件を選べるようにする仕組みです。
1-2 背景と法律上の位置づけ
2018年4月から、不動産取引において「インスペクションの説明」が宅建業者に義務付けられました。これにより、売買時に調査を実施するかどうかの確認が行われるようになりました。
1-3 新築よりも「中古」で重要
中古物件は築年数が経っているため、目に見えない劣化や修繕リスクがあります。インスペクションは、そのリスクを可視化する手段として活用されます。
第2章 インスペクションで調べる主なポイント
インスペクションは、外観だけでなく、構造や設備の内部まで広範囲に調査されます。
調査項目 | 内容例 |
---|---|
構造躯体 | 基礎・柱・梁などの劣化、ひび割れ、傾き |
屋根・外壁 | 雨漏り、ひび、塗装の劣化 |
給排水設備 | 配管の劣化・漏水の有無、詰まりの兆候 |
電気設備 | 分電盤、コンセント、配線の状況 |
換気・通風 | 換気扇、通風経路の確認、湿気によるカビの兆候 |
シロアリ被害 | 被害の跡、点検口からの目視確認 |
室内の傾き | 床の水平チェック、ドアや窓の開閉状態 |
※ただし、破壊検査(壁を壊して内部を見るなど)は基本的に行われません。
第3章 インスペクションの流れと実施タイミング
3-1 調査の流れ
- 専門業者に依頼
- 現地にて調査実施(所要時間:2~3時間程度)
- 調査報告書の提出(約1週間以内)
- 結果をもとに購入判断や交渉を行う
3-2 実施のタイミング
- 購入申込の前後:気に入った物件が見つかり、購入の意思がある段階で依頼するのが一般的。
- 売主に許可を得て行う必要があるため、事前に仲介業者を通じて調整しましょう。
第4章 インスペクションの費用相場
インスペクションの費用は調査範囲や物件の規模によって異なります。
調査内容 | 費用の目安(税別) |
基本調査(戸建て) | 5万〜7万円程度 |
基本調査(マンション専有部) | 3万〜5万円程度 |
詳細調査(機器使用など) | 追加で2万〜5万円 |
シロアリ調査 | 別途1万〜3万円程度 |
※保証付きのインスペクションや瑕疵保険の申請を伴う場合、費用がさらに増えることもあります。
第5章 インスペクションのメリットと注意点
5-1 メリット
- 安心して購入判断できる:目に見えないリスクが明らかになる
- 価格交渉の材料になる:修繕が必要なら値引き交渉の根拠になる
- 将来の修繕計画が立てやすい:どこがどの程度劣化しているかが分かる
- 売主・買主双方のトラブル防止:後からの「言った・言わない」を避けられる
5-2 注意点
- すべての欠陥が見つかるわけではない:あくまで目視中心の非破壊検査
- 売主の協力が必要:調査には室内や設備への立ち入りが不可欠
- 調査結果で購入をやめる可能性もある:買主にとっては良くても、売主にはマイナス
第6章 インスペクションと「瑕疵保険」の関係
建物状況調査を行うことで、「既存住宅売買瑕疵保険(かしほけん)」に加入できる場合があります。これは中古住宅購入後に見つかった構造・雨漏り等の不具合に対し、保険で修理費用をカバーする制度です。
この保険に加入するには、
- インスペクション実施済みであること
- 一定の基準をクリアしていること などの条件があり、調査業者が指定される場合もあります。
第7章 まとめ:インスペクションは「見えない不安」を減らす保険のようなもの
中古住宅は、写真や内見だけでは分からない“リスク”が潜んでいます。その不安を事前に洗い出し、納得して購入判断をするための手段がインスペクションです。
数万円の費用で、大きな損失や後悔を防ぐことができるなら、十分に価値のある投資といえるでしょう。
これから中古物件の購入を検討している方は、ぜひインスペクションの活用を前向きに検討してみてください。
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