「この土地、本当に買って大丈夫?」
「賃貸物件の裏に、嫌なトラブルが潜んでいないだろうか?」
不動産を買う・借りる・売る・貸す。そんなとき、重要になってくるのが「不動産調査」です。言い換えれば、その不動産が「安心して使えるものかどうか」を見極めるための情報収集活動。今回は、不動産業界や宅建士でなくてもわかるように、「不動産調査とは何か?」を基本の「き」から丁寧に解説します。
1. 不動産調査とは何か?
不動産調査とは、不動産の権利・法令・物理的状況・環境などの情報を集め、評価する作業です。簡単に言えば、「この土地・建物は、法律上・物理的に・安全に使えるか?」を確かめる作業です。
不動産の購入前だけでなく、売却時、賃貸物件の管理や仲介、相続対策、企業の用地取得時など、幅広い場面で必要とされます。
主な調査項目:
分類 | 内容 |
---|---|
権利関係 | 所有者、抵当権、地上権、借地権など |
法令制限 | 都市計画法、建築基準法、農地法など |
物理的状況 | 地形、面積、接道状況、設備、構造など |
周辺環境 | 近隣の用途、騒音、臭気、災害リスクなど |
2. なぜ不動産調査が重要なのか?
不動産は高額な資産です。一度取引すると簡単に引き返せません。もし調査が甘くて以下のような事実が後から発覚すると、大きな損失やトラブルを招きます。
例:
- 実は道路に接していない土地だった → 建築できない
- 越境している塀や樹木があった → 隣地との紛争に
- 再建築不可だった → 将来の資産価値が低い
- 地中埋設物があった → 解体・建築コストが増大
- 過去に事故や火災があった → 入居者が敬遠する
調査をしておけば回避できるはずのリスク。だからこそ、**取引前の調査=「不動産の健康診断」**が必要なのです。
3. 不動産調査の主な手順
調査は「机上調査」と「現地調査」に大きく分かれます。
① 机上調査(書類・地図などで行う)
主な情報源:
- 登記簿(法務局):所有者、抵当権などの権利関係
- 公図・地積測量図:土地の形状、面積
- 都市計画図(市役所):用途地域、防火・準防火、建ぺい率・容積率
- ハザードマップ:洪水、地震、土砂災害などのリスク
- 道路台帳(役所や建設事務所):接道の種類・幅員
机上調査では、「この土地・建物を、法律上、目的どおりに使えるか?」を確認します。
② 現地調査(実際に見に行く)
チェックポイント:
- 敷地の境界が明確か(境界杭など)
- 越境物(他人の樹木・構造物が入ってきていないか)
- 接道状況(幅員・舗装状況・通行の可否)
- 周辺環境(騒音、臭い、嫌悪施設など)
- 建物の劣化状況(ひび割れ、雨漏りなど)
写真撮影やメモを取りながら、机上ではわからない「現場ならではの情報」を拾っていきます。
4. 調査に必要な知識とスキル
不動産調査は、誰にでもできるわけではありません。以下のようなスキルが求められます。
- 法令知識(都市計画法、建築基準法、宅建業法など)
- 登記情報の読み方
- 地図・図面の読解力
- 役所調査のノウハウ
- 現場観察力
- 近隣住民への対応力(必要に応じて)
不動産会社や専門業者では、これらを体系的に学んだスタッフや宅地建物取引士、不動産鑑定士などが調査を担当します。
5. 個人でもできる調査のポイント
「専門知識がないけど、家を買いたい。最低限何を見れば?」という方のために、個人でもできる簡易調査のチェックリストをご紹介します。
✅ チェックリスト(個人向け)
- 法務局で「登記簿謄本」を取得し、所有者・抵当権を確認
- 市役所の都市計画課で「用途地域」「建ぺい率・容積率」を確認
- ハザードマップで災害リスクをチェック
- 物件の前面道路が幅4m以上あるか確認
- 現地で隣地との境界や越境物を観察
- 近隣の環境(騒音、工場、墓地、学校など)を歩いて確認
これだけでも大きなトラブルは避けられる可能性があります。
6. 不動産調査を依頼するなら?
不安がある場合は、次のような専門家に依頼できます。
✔ 不動産会社(仲介業者)
物件紹介時に調査を実施しているケースが多いです。仲介契約の一環で、重要事項説明に反映されます。
✔ 宅地建物取引士
法律に基づき重要事項説明を行う専門家。信頼できる宅建士のアドバイスはとても重要です。
✔ 不動産鑑定士
土地や建物の価値を専門に評価する国家資格者。企業や官公庁からの評価業務を多く請け負っています。
✔ 行政書士・司法書士
登記関係や法的手続きに明るく、調査の補助的業務を行うこともあります。
7. まとめ:不動産調査は「未来のトラブル防止策」
不動産調査は、言わば未来のトラブルを未然に防ぐための予防接種です。
- 購入や賃貸の前に調査すれば、失敗を回避できる
- 売却時の価格査定やアピール材料にもなる
- 相続時に土地の評価や活用法を考える材料にもなる
「何も知らずに買う・借りる」ことは、後で高くつきます。
まずは基本を知るところから始めてみませんか?
補足:よくある質問(FAQ)
Q1. 不動産調査って、お金がかかるの?
→ 自分で役所や法務局で行う分には数百円〜数千円程度。専門家に依頼する場合は数万円が相場です。
Q2. 調査ってどれくらい時間がかかる?
→ 簡易調査で1日〜2日、本格的な調査では1〜2週間程度かかることもあります。
Q3. 調査をしないとどうなるの?
→ 境界トラブル、再建築不可、税金トラブル、災害リスクなど、「買ってから気づいても遅い」問題に巻き込まれる恐れがあります。
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